hiroto-o's diary

とある大学の大学院博士課程を何とか卒業して、とある金融の仕事をロンドンでしています! リンクはご自由に♪ メールはhiroto_o20[at_mark] hotmail.comまで。([at_mark]は@に置き換えてね)

Read b4 u cite!?

健康診断の行列で待っているとき読んでいた論文。とても面白そうな内容なので。

"Read before you cite!", M. V. Simkin and V. P. Roychowdhury,
http://arxiv.org/abs/cond-mat/0212043
(↑大学以外からでもダウンロードできます。右側の"Download"の下の"PDF only"を押すと見れます。)


どんな内容かというと、普通、どんな学術論文でも過去の文献の「引用」というものをするわけですね? 引用というのは例えば、

[1]「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」、リリー・フランキー、扶桑社、2005。

とか

[2] A. Einstein, Phys. Rev., 1, 12-14 (1900).(*適当です)

とかのことです。


本来なら、引用をするときには、その文献をちゃんと読んでから引用するはずです(と思われています)。ところが、世の中キレイゴトばかりではなくて、時間がないときは全く読まずに引用することもあります。もっと酷い場合には、時間もそこそこあるのに1文字も読まずに引用だけ載っけてあるとか・・・

この論文は、そんな「全然読まずに引用している(ちょっといい加減な)人たち」の割合を見積もった研究です。その結果、何と80%ほどのケースで全く読まずに引用しているそうなのです。これってかなり多いような。*1


どんな風に見積もったかというと、論文の引用ミスを手がかりにして。つまり上の例だったら、ある文献で、

[1]「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」、リリー・フランキー、扶桑社、2009

みたいに間違ったとする。この引用をそのままコピペする人は、まず「東京タワー」を読んでいないと仮定していいのではないか。この仮定をもとにして、全然読まずに引用している人たちの割合を見積もったみたいです。*2


*1:んー、でも実際に論文を読んでみると、結構見積もり方にも問題あり。対象論文がKosteric-Thouless転移のオリジナル論文という部分が問題。"Kosteric-Thouless転移"というのは、物性物理では比較的常識的なことで教科書レベルの事項。つまり"Kosteric-Thouless転移"を知るチャンスは、オリジナル論文を通してというよりも寧ろ教科書によっての場合の方が多い。もし、ある教科書が引用のミスプリントをしたら、教科書を読んだ人達はそのまま引用するわな。問題児なのは、論文の内容(ここでは"Kosteric-Thouless転移")を全く理解しないまま引用している人たちであって、教科書を読んで"Kosteric-Thouless転移"を理解した人なら問題ないと思うんだけど。

*2:僕の場合だと、引用の80%くらいは一応読んでます。まあ、アブストとグラフと結論くらいだけれども。残りの20%は入手不可能な論文とかです。実際問題いうと、もし読まずに引用した論文の筆者がレフリー(論文審査員)になったら、多分終わると思っているチキンなんでね。